Episode 2 ハードル

~ 自分たちで本当にできるらか? ~

 

赤坂エルカミーノのホームページに書いてあった「プロモートする」ということは、「興行を企画し主催する」という意味であって、つまり、ジェリーさんのライブを企画して、主催することができる人や団体を募集していた、とのことだった。当然のことながら、ただこの計画に賛成の人をアンケートで調べていたわけではないし、ましてや、バックバンドを募集していたわけではなかったのである。

しかし、ジェリーさんのライブをプロモートできるということは、バックバンドも含め、自分たちで好きなように計画ができるということでもあった。

「憧れのジェリーさんのライブを自分たちが計画するのか!」

場所や時間なども自由に決めてよい、どんなライブにしてもよい、ライブ後の交流会をやるならそういうのにも出てもらえる、とのこと。ジェリーさんと共演するだけでなく、それ以外にもジェリーさんとたくさん接することができるかもしれない。そんなまたとない機会がすぐ目の前の、手の届きそうなところに現れたのである。期待がパァっと大きく膨らみ、嬉しい気持ちと、すごく楽しみな気持ちで、ものすごくワクワクした。この時、スクーターズの面々は、ジェリーさんと共演している自分たちを想像して悦に入り、ニヤニヤしてよだれを垂らしていた、かもしれないw。

ところが、そのあとの説明が、恍惚の境地にいたスクーターズをあっという間に現実に引き戻した。ライブのプロモート、当たり前だがそんなに簡単なものではない。ジェリーさんのライブ催行について一からすべて計画し、お客さんを集めて、実際に取り仕切らなければならない。ライブを主催するということは、当然いろんな経費がかかる。会場の手配、交通手段や宿泊の手配、ライブのプランや進行、音響や照明、お客さんの募集(広報、販売)、スタッフの手配、等々もぜーんぶ自分たちで行わなければいけない。いくら好きなようにできるとはいえ、他の場所でのライブとの関連も考慮しなければいけないし、ジェリーさんの年齢や体調にも気を付けなければいけないだろうから、自分勝手な計画をするわけにはいかない。

「・・・」

説明を聞き終わり、我々はしばらく言葉を発することができなかった。シロート同然の田舎者である自分たちが、有名人のライブをプロモートできるだろうか。長野県でやって人が集まってくれるだろうか。人が集まらなかったらジェリーさんに失礼になってしまうのではないだろうか。たくさんの経費がかかるが、採算割れになってたくさんの持ち出しが必要になってしまうのではないか。いろんな不安が頭をよぎり、さっきまで愉悦に浸っていたスクーターズの面々は、たちまち今度は青菜に塩をかけたようになっていた、かもしれない。「花火のごとし・・・」という表現は、あながち大げさでもないのである。

この日まで、「ジェリーさんのバックバンドができるなら多少遠い場所でも行っちゃおうぜ!」などと軽い気持ちで期待に胸をはずませていた我々の目の前に、メチャクチャ高いハードルが出現した。戸田さんがやさしい笑顔でおっしゃっていた「大丈夫ですよ♪」という言葉が、このときは全然大丈夫そうに聞こえなかった・・・。

(つづく)